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1993年生まれ。江戸川区出身。写真家、仮面劇俳優、インプロバイザーとして活動中。人物ポートレート、人物スナップを得意とする。

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機械仕掛けの亀に連れられて金を払って行くホテル「浦島」に、家族4人で行ってきた。家族旅行はもう何年ぶりだろう。熊野をめぐり、霊験あらたかになった気がした。霊験あらたかなみかんソフトクリームを食べ、霊験あらたかなマグロを食べ、霊験あらたかな風呂に入った。

見えすぎることに続き、聞こえすぎる事件が起きた。いつものようにベランダで煙草をすっていたら、キーーーーン、と19000hzの電子音が響く。あまりのことにしゃがみ込む。うるさくて頭がクラクラした。お母さん大変、うるさいの、すごくうるさい。だけど母には何も聞こえていなかった。世に言うモスキート音という奴で、若者にしか聞こえないらしい。隣の家が何か新しい電子機器を購入したようで、窓があいていると音が聞こえた。キーーーーン。不思議と夜中に聞こえることはなく、道路にひとが通ると鳴るようだった。なんのセンサーの雑音なのか、それともたむろする若者を追い払う用途なのか。和歌山で見たイルカを思い出した。あいつらは、こんなひどい世界で生きているのだろうか。

母がものすごい勢いで家に駆けこんできた。「ねえ!」玄関からでも昼寝をしていたわたしが起きるくらいの声で。「ねえ凄い虹なの!」
窓から見えた虹があんまり「凄い虹」でわたしは飛び起きて、虹の根元に向かって自転車を飛ばした。走っても走っても虹は近づかず、結局そのまま夜になってしまった。

もう10年以上前、江戸川家両親をヘビースモーカーからノンスモーカーに変えた名著『禁煙セラピー』を読んだ。苦しかった。読んでいる間ずっと苦しかった。わたしはしっかり知っていたから。「どうして煙草を吸うのか」「理由なんてない」が禁煙セラピーの答えだった。けれど、わたしが煙草を吸っている理由は、昔、先生に言い当てられたことがあった。当たっていたかどうかはわからないし、そんなの間違いだと今から覆すことだってあるいは。でもそれが出来ないくらいには、自分に自信がない。現に、煙草のおかげで、過度のピアッシングをやめられたのは間違いがなかった。ちゃんと知っていた。わたしがやめられないのは、煙草じゃなくて自傷行為だ。リストカットをするかわりに、ピアッシングのかわりに、過拒食のかわりに、逸脱した性行為のかわりに、暴力のかわりに、オーバードーズのかわりに、煙草に火をつけていた。そのことは社会で生きていくうえで、わたしにとってはどうしても必要なことだった。それがニコチン幻想だとはどうしても信じられなかった。煙草を吸う前は、身体に生傷が絶えなかった。暇があれば献血した。ピアッシングもしたし、毎日はがしてしまって6年以上治らないかさぶたがあった。
大人になりたいと思った。煙草はやめなくてもいいと思った。でもせめて、ファッションでも気晴らしでもニコチン大好きでもなんでもいい、健全な理由をもちたかった。理由が見当たらないなら、その時やめればいいと思った。
もう少しな気がする。もう少しでそういう日がくる気がする。もしもその時がきたら、「今までありがとう、もう大丈夫、ひとりで歩いていけるよ」そう言ってライターを捨てたい。

そうして、美容のために人生で初めての禁煙に挑戦し、2日で挫折した。禁煙はダイエットと同じだと思っていた。チョコレートをやめる時のように「食べてはいけない」と考えないのがコツだった。チョコレートをやめるとき、わたしは「食べてはいけない」ではなく「食べなくてもいいかな」と思うようにしている。そうして食べなくてもいいかな、を続けると、癖が抜けて食べたいとも考えなくなる。だけど、誰かがとてもよいチョコレートを買ってきてくれたり、どうしても「食べなくていい」とはならないときには普通に当たり前のことのように禁忌でもなんでもないように食べる。同じ方法で禁煙をしようとした。ポイントは、チョコレートは一生辞めなくても減量出来れば成功と呼べる。だけど、禁煙はそうもいかなかった。3日目に誰かがとてもよい煙草を買ってきてくれたからといって、吸ってはいけないんだ。

しっかりと度の合ったコンタクトをつけはじめて約半年、肌荒れが妙に気になるようになってしまった。今まで近くは殆ど見えていなかったため、自分の肌なんて見えていなかった。正確には見ようともしていなかった。久しぶりに、石鹸で顔を洗う。貧乏をきっかけに始めた湯シャンの辞め時を見失い、もう2年以上石鹸を使っていなかった。新しいコンタクトはそれはもうよく見えてしまって、世界が明るすぎた。文字通り、「明るすぎた」ので、気が付いたら日中外を歩くと頭痛がするようになっていた。サングラスを買ったらもうそれ無しでは歩けなかった。わたしは、こんなに目が悪かったんだ。それなのにそのことに気が付かずに、7年もの間過ごしていた。良く見えるようになった新しい世界は情報量が多すぎて、見えなくていいものまで見えて神経質になってしまう。肌のくすみも、壁のよごれも、手すりの指紋もストレスだった。今まで気が付かなかったのに。今まで気にしなかったのに。

初めてのMRIを撮った。大きな音が聞こえます、とヘッドフォンをされ、そこからは安っぽいラテンの音楽が流れていた。ブーン、ガンガン、と本当に大きな音がした。その合間でラテンがズチャポコズチャポコ。