140215
長い夢を見た。家の前まで迎えに来たトロッコに飛び乗ると、写真部の人たちがはしゃいで外の写真を撮っていた。まだ夜中だった。長い長い坂を下る。信じられないスピードが出ている。先輩、わたしはカメラを忘れてしまいました。出先でインスタントカメラを買うか、小さなデジカメを買ってしまうか、今回は旅を楽しむかのどれかです。トロッコは下り続ける。風がびゅうびゅう顔にあたる。写真部の合宿にカメラを忘れてくる奴があるか。先輩が困った顔をする。トロッコは見晴らしのいい山道を下っていた。遠く麓に町が灯っている。風が冷たくて頭が痛い。ポケットに体温計が入っていた。パジャマのままだった。熱を測ると8度5分もあった。トロッコはまだ下り続ける。首筋が熱い。もうこのまま家には帰れない気がした。わたしはあの町で暮らすことになる。町の明かりはまだ遠く、色んな色がちらついている。昔のSF映画に出てくる日本のネオンみたいだ。冷たい風がびゅうびゅうあたる。みんな帰りは大変だぞ、山道を登るんだぞ。まだ知らないあの町の、ネオンの中から手を振るわたしが想像できた。みんなはまだ知らないけれど、近いうちにそうなることがわかる。いつまでもいつまでも下るトロッコに、黙ったままで乗っていた。