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1993年生まれ。江戸川区出身。写真家、仮面劇俳優、インプロバイザーとして活動中。人物ポートレート、人物スナップを得意とする。

 会話もなく、なんて思っていたけれど、飛行機で相席したお姉さんと仲良くなった。サンフランシスコ在住だそうで、いろいろ教えてもらう。出国審査を前に真っ青なわたしを励ましてくれた。
 たいして眠れていないのに、新しい1日が始まった。ホステルに降りて特にすることの検討もついていない。とりあえずりなさまのいるSAITを目指した。電車で直行すると少し早いかな、と歩いてみることに。これが間違いだった。途中で購入した地図をみても縮尺が理解できていなかった。
 川を右に曲がる、とわかっていたけれど、あるけどあるけど川がない。そしてご飯屋さんがない。仕方がないので林檎をかじりながらあるいた。やっと川にたどり着いて、目的地の遠さに気が付いた。時すでに遅し、歩いてSAITに行く以外に帰る手立てがない。ネットもなければSAITの詳細な住所も持っていなかった。川を渡って迷子になる。タバコを吸おうとしても強風で火がつかない。お腹を下してサブウェイでコーヒーだけを頼むとえらい怒られた。あとから知ったのだが、サブウェイで食べ物を頼まないやつなんていないそうだ。今日がカナダ初日で、迷子になって、と説明しているうちに涙が出た。もう帰れないかもしれない。サブウェイのおばさんは、泣き出したわたしに優しかった。従妹が日本に住んでいるそうで、道案内をしてくれて、迷子になったら戻ってこいと言ってくれた。”You can come here anytime. This is my SUBWAY. We help you anytime.”
 その後も延々迷子を続け、途中でリーに聞いていた住所に誤解があることに気が付き、何人もの道行く人に”SAITという宿泊施設を探しているが聞いたことあるか”と尋ねまくった。やっとあたりをひいてそれらしきものにたどり着いたときには出発してから4時間がたっていた。10キロは歩いてきた。看板はなく建物にはいっても確信が持てない。ここじゃなかったら電車に乗って、もう帰ろう。りなさまのいるはずの9階へあがる。エレベーターを降りると見慣れたシルエットが振り返った。りなさまだった。