150731
美人のゲロでもゲロはゲロか。新宿から満員電車、わたしよりも不細工な女子大生がうずくまっていた。大丈夫ですかと声をかける。「大丈夫です」ふらふらしながら立ち上がり、またうずくまる。サラリーマンの裾をつかむ。隣のお姉さんの脛をつかみ立ち上がる。ロッキーを彷彿とさせる立ち上がり、見るからにパンチドランクされている。三鷹で「一緒に降りましょうか」と声をかけるも拒否された。仕方なく周りの人と状況をうかがう。武蔵境、戦況が変わった。わたしの腕をふんずとつかみ「吐きます」と一言。腕を離せ!と言う間に大量のゲロ、ゲロ、おそらく麻婆豆腐のゲロ。まだ海にも連れて行ってあげていなかったのに、ビーチサンダルがびしょびしょになった。咄嗟の戦況判断をした周りの人は無事で、腕だけをそっと伸ばしてティッシュをくれた。みんなティッシュをくれた。ハグしたい気持ちだ。優しく介抱し、周りの協力でゲロを拭き、国分寺で降りる。一言も文句を言わなかった。優しい気持ちだった。誰もわたしを褒めなかったし、誰も彼女を責めなかった。あんなにドラマチックにゲロを吐かれたのに世界は何も変わらなかった。帰り道で考える。もしもあれがイケメンだったら、何かドラマ起きていただろうか。もしも彼女が美人だったら、もっと素敵な人が介抱しただろうか。麻婆豆腐がフラッシュバック。人はゲロの前に無力だった。就職活動の悩みも、金欠も、美人もイケメンも、上司も部下も大統領も、ゲロの前では無力だった。