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1993年生まれ。江戸川区出身。写真家、仮面劇俳優、インプロバイザーとして活動中。人物ポートレート、人物スナップを得意とする。

長く続く桜の道、やや少ない街灯に照らされてところどころ白くぼんやりと光っていた。未だに蛍光灯なのか影は緑に長く伸びてさながらキリコの絵画に迷い込んだよう。
臨海公園では、昔からずっと「アベックに対する集団暴行」を警戒していた。罰則に力を入れるのではなく「注意して暗くなったら帰ってくれ」という放送を堂々と流すあたりに江戸川区を感じている。
好きな人と、絵画の中を歩きながら、もしも今集団に襲われたらと考えていた。見渡す限り人はいない、何かあったら全速力で逃げられる靴を履いてきた。好きな人は、敵を倒す方法ではなく安全に逃げのびる方法を何千通りも知っていた。そのいくつかをわたしにも教えてくれた。手に持っているのは飲みかけのアサヒスーパードライ、プロレスではよく武器になるけれど実戦ではお話にならない。お金もないわたしたちはどうして暴行されるかもしれないんだろう、と2人のボロボロの上着を見ていた。
春の風はなりを潜め、すっかり冷たい風が吹いていた。突然の寒気のおかげで今年の桜は長く持つらしい。もしかしたら来週もこうやって花見ができるだろうか。もしかしたら、こういう明日の約束が、羨ましかったんだろうか。