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1993年生まれ。江戸川区出身。写真家、仮面劇俳優、インプロバイザーとして活動中。人物ポートレート、人物スナップを得意とする。

ひょんなことから、ジュリエットをやることになった。それで、高校生の時駅で見た「どうしてわたしが東大に?」の予備校ポスターを思い出す。どうしてわたしがジュリエットに?
そういう、いわゆるヒロインのようなものに縁がなかったし、もっといえば、脚本芝居と無縁だったわたしが、シェイクスピアをやることになるとは思ってもみなかった。
中学生ではじめてシェイクスピアを読んだとき、これが名著か、なんて愚かで浅はかな登場人物たちなんだろうと思っていた。戯曲の読み方を知らなかったわたしは、あくまで小説としてロミオとジュリエットに出会った。誰にも感情移入できないし、ホラー映画の序盤で死ぬ若者たちみたいだと思った。シェイクスピアを面白がれるようになったのは、ずっとあと、大学に入ってからだった。

シェイクスピアの題材は普遍的なもの、だとかよく言われるけれど、正直あまりピンとこない。わたしには愛を誓いあう、そのことだけですらいまだにピンとこないでいる。今回、京島長屋でロミオとジュリエットをやる。はじめて、ロミオとジュリエットを「よくある話」として捉えることが出来始めている。

もう名前も思い出せない。小学校2年生の時、なぜか仲のよかった女の子がいた。その子の家は学区で言えば反対側にあり、少し遠かった。こっそり何度か家に遊びに行ったが、お母さんとあまりうまくコミュニケーションがとれなかった。もしかした”普通”と何か違うのかな、という様子だったことを覚えている。こっそり遊びに行ったからなのか、家のことがあったからかわからない。その子と遊んでいると母がひどく怒った。わたしたちは、段々遊ばなくなってしまった。階段でうずくまるその子の顔は思い出せても、もう名前も思い出せない。