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1993年生まれ。江戸川区出身。写真家、仮面劇俳優、インプロバイザーとして活動中。人物ポートレート、人物スナップを得意とする。

ドングリがテントをうつ音、炭火がパチパチと鳴く音、葉が触れ合ってざわめく音。キャンプ1回で、音のソノリティが3回は収録できる、とクジが笑っていた。
夜11時には、だいたいみんな寝静まって、周りのテントでもセンチメンタルな大人だけが起きていた。わたしとクジは簡易椅子に座ってお湯割りを飲んだ。炭火がとろとろと燃えている。クジと少しだけ、哲学の話なんかをした。自然に触れると簡単に哲学の話をしてしまうあたり、単純だと思いながら。こいつとは、絶対にわかりあえない。日頃からそう思い続けたまま、もうすぐ10年の付き合いになってしまう。わかりあえないクジと、炭火の前でぽつぽつと話したことは、東京に帰ってなお、わたしの胸の中で燃え続けている。何を話したかは、秘密にしておきたい気がしている。